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ドクター便り

済生会呉病院の医師から皆さんへお便りです。


2024.9.30
テーマ:-便秘外来について-
日山 亨医師(非常勤)

2024年4月から便秘外来を担当している広島大学消化器内科(保健管理センター)の日山 亨です。
便秘外来をご紹介させていただきます。
(便秘外来受付時間:毎週水曜日8:30〜11:30)

病態に応じた治療

1) 様々な要因がある

便秘の症状を呈する場合には様々な要因があります。大腸がんやポリープなどの器質性疾患に伴うものや、薬剤の影響によるもの、腸管が過長になっているなどの形態異常によるものなどがあります。また、便秘型過敏性腸症候群といった類縁疾患の場合もあります。

2) まず、器質性疾患の除外

まず、大腸内視鏡検査などで器質性疾患がないことを確認する必要があります。当院には消化器内科専門医が常時勤務しており、精度の高い大腸内視鏡検査などを行うことができます。大腸に器質性疾患が認められた場合は、その疾患の治療を行うことになります。

3) 大腸の形態異常

大腸に器質性疾患を認めない場合は、慢性便秘症として治療を開始していきますが、腹部X線所見が重要となります。腸管が過長であったり、腸管の固定が不十分であったりすることによる、いわゆる「ねじれ腸」や「落下腸」の場合は、腸管内容物の大腸通過時間が延長し、腸管内圧が低下していることが多いとされています。治療としては、最初に浸透圧性便秘治療薬を用い、その後、病状に応じて腸管上皮機能変容薬などを使用することになります。

4) 便秘型過敏性腸症候群

一方、便秘型過敏性腸症候群の場合は腸管内容物の大腸通過時間は正常なことが多く、腸管内圧は高いことが多いとされています。治療としては、最初から腸管上皮機能変容薬を使用する場合もあります。
現在、作用の異なる種々の便秘治療薬がありますので、個々の患者さんの病態に応じて、薬剤を適切に使用していくことが重要になります。これまでの経験や最新の知見を得ながら、患者さんの満足度の高い治療を目指していきたいと考えています。

便秘症は生活習慣病の1つ

ご存知のように、便秘症は単に生活の質(QOL)を下げるだけでなく、虚血性心疾患などの心臓疾患や気管支喘息などのアレルギー疾患、糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患、さらには、うつ病などの精神疾患など、全身の様々な疾患と関係していることが明らかになってきています。
便秘症は生命予後を悪化させるため、高血圧症や糖尿病などと同じく、生活習慣病の1つとして扱うべき疾患です。便秘をお持ちの方はぜひ治療をお受けください。

2020.2.5
テーマ:-慢性胃炎・ピロリ菌感染について-
熊田 純子医師(内科副医長)

検診等で胃内視鏡検査や胃透視検査を受けられた時に慢性胃炎と診断されることがあります。慢性胃炎には様々な種類の胃炎がありますが、今回は日常診療で多く認める萎縮性胃炎に関して簡単にまとめました。

萎縮性胃炎とは、一般的にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染することで胃粘膜に炎症を起こした状態を指します。ピロリ菌は大きさ約0.5X2.5~4.0μmの小さな細菌で胃の中を移動しています。1979年に発見され、2001年に胃癌の発生の原因になっていることが研究で明らかになりました。

ピロリ菌はヒトからヒトへの経口感染であると推定されています。感染経路については、不完全処理された生活用水・井戸水に混入したピロリ菌による感染が疑われていましたが、衛生環境がよくなった現在では、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられています。また、感染時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫力が弱い幼小児期に成立すると考えられています。

上下水道の普及によりピロリ保菌者は減っていますが、普及途上に子供世代だった50代以上の日本人の約50~60%が感染者と言われています。 胃がんによる死亡者数は、癌による死亡の男性2位、女性4位(2017年度人口動態統計による死亡データ)と日本人には多い傾向となっています。

そこで、ピロリ菌除菌治療による胃癌発症抑制が証明されたことで2013年2月からピロリ菌感染性胃炎に対する除菌治療が保険診療として認可されました。(今までは胃十二指腸潰瘍・胃癌の治療歴がある患者さんのみ)

ピロリ菌感染診断には血液検査、尿検査、尿素呼気試験、組織培養検査、便検査などがあります。当院で検査結果に数日かかるため結果は後日となります。 内視鏡で慢性胃炎を認め、検査で感染が確認された場合に除菌治療を行うことが可能となります。

治療は『3剤併用療法』といって、2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を1日2回、一週間服用するだけです。約1.5~2か月後に、除菌できたかどうかを呼気検査(吐いた息を検査する)で調べます。最初の治療で90~95%程度は除菌できますが、 下痢や腹痛などの副作用で薬を服用できなかったり、薬に耐性を持つピロリ菌がいるなどで除菌が失敗した場合、薬の種 類を変えて再び除菌療法を行うこともあります。

除菌治療を行うことで胃癌リスクは減少しますが、ゼロになることはありません。定期的に胃内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。

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